条文
賃金、労働時間その他の当該事業場における労働条件に関する事項を調査審議し、事業主に対し当該事項について意見を述べることを目的とする委員会(使用者及び当該事業場の労働者を代表する者を構成員とするものに限る。)が設置された事業場において、当該委員会がその委員の五分の四以上の多数による議決により次に掲げる事項に関する決議をし、かつ、使用者が、厚生労働省令で定めるところにより当該決議を行政官庁に届け出た場合において、第二号に掲げる労働者の範囲に属する労働者(以下この項において「対象労働者」という。)であつて書面その他の厚生労働省令で定める方法によりその同意を得たものを当該事業場における第一号に掲げる業務に就かせたときは、この章で定める労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定は、対象労働者については適用しない。ただし、第三号から第五号までに規定する措置のいずれかを使用者が講じていない場合は、この限りでない。
一 高度の専門的知識等を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められるものとして厚生労働省令で定める業務のうち、労働者に就かせることとする業務(以下この項において「対象業務」という。)
二 この項の規定により労働する期間において次のいずれにも該当する労働者であつて、対象業務に就かせようとするものの範囲
イ 使用者との間の書面その他の厚生労働省令で定める方法による合意に基づき職務が明確に定められていること。
ロ 労働契約により使用者から支払われると見込まれる賃金の額を一年間当たりの賃金の額に換算した額が基準年間平均給与額(厚生労働省において作成する毎月勤労統計における毎月きまつて支給する給与の額を基礎として厚生労働省令で定めるところにより算定した労働者一人当たりの給与の平均額をいう。)の三倍の額を相当程度上回る水準として厚生労働省令で定める額以上であること。
三 対象業務に従事する対象労働者の健康管理を行うために当該対象労働者が事業場内にいた時間(この項の委員会が厚生労働省令で定める労働時間以外の時間を除くことを決議したときは、当該決議に係る時間を除いた時間)と事業場外において労働した時間との合計の時間(第五号ロ及びニ並びに第六号において「健康管理時間」という。)を把握する措置(厚生労働省令で定める方法に限る。)を当該決議で定めるところにより使用者が講ずること。
四 対象業務に従事する対象労働者に対し、一年間を通じ百四日以上、かつ、四週間を通じ四日以上の休日を当該決議及び就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより使用者が与えること。
五 対象業務に従事する対象労働者に対し、次のいずれかに該当する措置を当該決議及び就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより使用者が講ずること。
イ 労働者ごとに始業から二十四時間を経過するまでに厚生労働省令で定める時間以上の継続した休息時間を確保し、かつ、第三十七条第四項に規定する時刻の間において労働させる回数を一箇月について厚生労働省令で定める回数以内とすること。
ロ 健康管理時間を一箇月又は三箇月についてそれぞれ厚生労働省令で定める時間を超えない範囲内とすること。
ハ 一年に一回以上の継続した二週間(労働者が請求した場合においては、一年に二回以上の継続した一週間)(使用者が当該期間において、第三十九条の規定による有給休暇を与えたときは、当該有給休暇を与えた日を除く。)について、休日を与えること。
ニ 健康管理時間の状況その他の事項が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める要件に該当する労働者に健康診断(厚生労働省令で定める項目を含むものに限る。)を実施すること。
六 対象業務に従事する対象労働者の健康管理時間の状況に応じた当該対象労働者の健康及び福祉を確保するための措置であつて、当該対象労働者に対する有給休暇(第三十九条の規定による有給休暇を除く。)の付与、健康診断の実施その他の厚生労働省令で定める措置のうち当該決議で定めるものを使用者が講ずること。
七 対象労働者のこの項の規定による同意の撤回に関する手続
八 対象業務に従事する対象労働者からの苦情の処理に関する措置を当該決議で定めるところにより使用者が講ずること。
九 使用者は、この項の規定による同意をしなかつた対象労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないこと。
十 前各号に掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項
② 前項の規定による届出をした使用者は、厚生労働省令で定めるところにより、同項第四号から第六号までに規定する措置の実施状況を行政官庁に報告しなければならない。
③ 第三十八条の四第二項、第三項及び第五項の規定は、第一項の委員会について準用する。
④ 第一項の決議をする委員は、当該決議の内容が前項において準用する第三十八条の四第三項の指針に適合したものとなるようにしなければならない。
⑤ 行政官庁は、第三項において準用する第三十八条の四第三項の指針に関し、第一項の決議をする委員に対し、必要な助言及び指導を行うことができる。
解説
第一項
本条は特定高度専門業務・成果型労働制、一般には高度プロフェッショナル制度を定めたものである。
「労働時間その他の当該事業場における労働条件に関する事項を調査審議し、事業主に対し当該事項について意見を述べることを目的とする委員会(使用者及び当該事業場の労働者を代表する者を構成員とするものに限る。)」とは、労使委員会を指す。
「行政官庁」とは、所轄労働基準監督署長のことである。
「厚生労働省令で定める方法」は、労働基準法施行規則第三十四条の二第二項にて規定されている。
第一項第一号
対象業務は、本条に加え、労働基準法施行規則第三十四条の二第三項にて規定されている。
第一項第二号
第一項第二号イ
「厚生労働省令で定める方法」は、労働基準法施行規則第四項にて規定されている。
第一項第二号ロ
「三倍の額を相当程度上回る水準として厚生労働省令で定める額」とは、1075万円である。
第一項第三号
「厚生労働省令で定める方法」とは、労働基準法施行規則第八項にて規定されている。
第一項第四号
第一項第五号
第一項第五号イ
「厚生労働省令で定める時間」とは、11時間である。
「厚生労働省令で定める回数」とは、4回である。
第一項第五号ロ
「健康管理時間」とは、1週間当たり40時間のことである。
「厚生労働省令で定める時間」とは、1箇月当たり100時間又は3箇月当たり240時間である。
第一項第五号ハ
第一項第五号ニ
「厚生労働省令で定める要件」とは、1箇月当たり80時間を超えた労働者又は申出があった労働者を指す。
「厚生労働省令で定める項目」は、労働基準法施行規則第十三項にて規定されている。
第一項第六号
「厚生労働省令で定める措置」とは、労働基準法施行規則第十四項にて規定されている。
第一項第七号
第一項第八号
第一項第九号
第一項第十号
「厚生労働省令で定める事項」とは、労働基準法施行規則第十五項にて規定されている。
第二項
「行政官庁」とは、所轄労働基準監督署長のことである。
第三項
第四項
第五項