条文
この法律で平均賃金とは、これを算定すべき事由の発生した日以前三箇月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額をいう。ただし、その金額は、次の各号の一によつて計算した金額を下つてはならない。
解説
第一項
「算定すべき事由の発生した日」は、それぞれ以下の通りである。
- 賃金締切日がある場合は、直前の賃金締切日
- 解雇予告手当の場合は、解雇通告日
- 休業手当の場合は、休業日(2日以上の期間にわたる場合は最初の日)
- 年次有給休暇中の賃金の場合は、年次有給休暇を与えた日(2日以上の期間にわたる場合は最初の日)
- 災害補償の場合は、事故発生の日又は診断により疾病の発生が確定した日
- 減給の制裁の場合は、減給の制裁の意思表示が相手方に到達した日
第一項第一号
「労働した日若しくは時間によつて算定され、又は出来高払制その他の請負制によつて定められた場合」、労働日数が少ない者については、賃金の総額を暦日数で除したとき、平均賃金が不当に低くなるおそれがあるため、これを防ぐべく最低保証を定めている。
最低保証額 = 3箇月間に支払われた賃金の総額 / 3箇月間の労働日数 × 60%
第一項第二号
「賃金の一部が、月、週その他一定の期間によつて定められた場合」とは、基本給は日給制等になっているものの、手当は月給制等で支払われている場合を指す。
「その部分の総額をその期間の総日数で除した金額と前号の金額の合算額」とあるように、日給制等の部分についてのみ、最低保障をかける。
最低保証額 = 3箇月間に支払われた月給等の総額 / 3箇月間の総日数 + 3箇月間に支払われた日給等の総額 / 3箇月間の労働日数 × 60%
第二項
本条一項で「以前」とあるが、実際には算定事由発生日は含めず、その前日からの3箇月間で算定する。
通常、賃金締切日があるため、平均賃金の基本計算式は、一般的に次のようになる(銭位未満切捨て)。
平均賃金の原則額 = 算定事由発生日の直前の賃金締切日以前3箇月間の賃金の総額 / 算定事由発生日の直前の賃金締切日以前3箇月間の総日数(総暦日数)
第三項
各号に加え、正当な争議行為による休業期間及び労働組合事務専従中の期間についても控除する。
年次有給休暇の取得日数及び年次有給休暇中の賃金は、算定期間及び賃金の総額から控除しない。
育児介護休業法に定める、子の看護休暇・介護休暇の取得日数及び当該休暇中の賃金は、育児休業・介護休業の場合と異なり、算定期間及び賃金の総額から控除しない。
通常、賃金締切日があるため、平均賃金の基本計算式は、一般的に次のようになる(銭位未満切捨て)。
平均賃金の原則額 = (算定事由発生日の直前の賃金締切日以前3箇月間の賃金の総額 – 本条三項の期間中の賃金) / (算定事由発生日の直前の賃金締切日以前3箇月間の総日数(総暦日数) – 本条三項の期間中の日数)
第三項第一号
第三項第二号
第三項第三号
第三項第四号
第三項第五号
試みの使用期間中に平均賃金を算定すべき事由が発生した場合については、労働基準法施行規則第三条にて規定されている。
第四項
「臨時に支払われた賃金」とは、臨時的、突発的事由に基づき支払われたもの及び結婚手当等支給条件はあらかじめ確定されているが、至急事由の発生が不確定であり、かつ非常に稀に発生するものをいう。
「三箇月を超える期間ごとに支払われる賃金」とは、年3回内の賞与等をいう。
ここでいう賞与は、支給額があらかじめ確定されていないものを指し、年俸制で、毎月払い部分と賞与部分を合計し、あらかじめ年俸額が確定している場合の賞与部分など、支給額が確定しているものは該当しない。
支払期間だけでなく、計算期間が3箇月を超えるかどうかによって決まり、6箇月通勤定期乗車券を2回支給する場合であっても、各月分の賃金の前払と認められるため、当該乗車券の金額は該当しない。
「賃金並びに通貨以外のもので支払われた賃金で一定の範囲に属しないもの」とは、法令又は労働協約の別段の定めなしに支払われた現物給与(違法賃金)をいい、法を守っている限り発生しない。
通常、賃金締切日があるため、平均賃金の基本計算式は、一般的に次のようになる(銭位未満切捨て)。
平均賃金の原則額 = (算定事由発生日の直前の賃金締切日以前3箇月間の賃金の総額 – 本条三項の期間中の賃金 – 本条四項の賃金) / (算定事由発生日の直前の賃金締切日以前3箇月間の総日数(総暦日数) – 本条三項の期間中の日数)
第五項
第六項
賃金締切日があるときは、原則として直前の賃金締切日から起算する。