条文
(解雇制限)
使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業する期間及びその後三十日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が、第八十一条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない。
② 前項但書後段の場合においては、その事由について行政官庁の認定を受けなければならない。
解説
第一項
休業していなければ、解雇制限の規定は適用されない。
契約期間満了により当然に労働関係が終了する場合は、たとえ労働者に辞める意思がなかったとしても、解雇には当たらない。
よって、解雇制限期間中に契約期間が満了した場合には、その契約が引き続き更新されたと認められる事実がない限り、労働者を辞めさせても、本条違反ではない。
「やむを得ない事由」とは、事業場の火災による消失(事業主の故意又は重過失によるものを除く)、震災による工場の倒壊等、事業の経営者として社会通念上採るべき必要な措置をもってしても、通常如何ともしがたい状況にある場合をいう。
事業経営上の見通しの過誤による経営困難などは該当しない。
第二項
「天災事変その他やむを得ない事由」については、行政官庁の認定を受けなければならない。
「行政官庁」とは、所轄労働基準監督署長のことである。
「認定」とは、解雇制限の解除事由の事実があるかどうかを行政官庁が確認する処分であり、解雇制限の解除事由の判断を使用者のみで行うことを規制する。
認定は事実確認に過ぎず、認定を受けなかった場合でも、客観的に認定事由がある場合には、解雇制限は解除され、労働者を有効に解雇することはできる。
そのため、認定を受けなかったことで、解雇が無効となることはないが、本条違反となることは免れない。
派遣労働者について、事業の継続が不可能かの判断は、派遣元の事業が行う。
判例
専修大学事件